とても古いインタビュー

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とても古いインタビュー その2

1 何故、あなたのCDは、”マゾ的楽器”と呼ばれているのですか?

このタイトルは僕がつけました。理由は楽器を苛めているかのような演奏をしているからです。しかしこの場合「サド的な演奏者」ではなくて、楽器を感情移入の対象にしているわけです。つまり彼等は苛められて喜んでおるのです。
本当なら「マゾ的な音楽」にすべきところですが、ぼくは音楽を聴くとき、常に楽器に感情移入しているのです。
サルバドル・ダリの作品にも同名のタイトルがあります。
ところで、このCDに書かれている英文はレーベルの人が書いたもので僕やチルドレンクーデターとは無関係です。

2 何故、あなたはたまにしか演奏しないのですか?何故特に最近そうなのですか?

予定を組む人間がいないからです。
それに、絵の仕事で、数ヵ月間拘束されることも多いのです。

3 どのような音楽を聞くのが好きですか?

大雑把にいえば、演奏臭いものが好きです。

4 ギターの磯田氏は、自分のギターを作っていませんか?一体どんなギターを創造したのです か?どのように使っていますか?

彼は、ギターを創造していません。ただ、ちょっとした装置を装着しているときはあります。電子音のおもちゃや、壊れかけたウォークマンです。
彼は現在、ポップミュージックの仕事で忙しく、セッションする機会はほとんどありません。

5 あなたは、どのように政治的なものの見方/哲学を発展させてきたのですか?反資本主義は日本では普通なのですか?あなたの政治的見解に対してどのような反応がありますか?

反資本主義は日本で普通ではありません。
私も資本主義をまったく否定しているわけではなく、資本主義だけを崇拝していることが異常だと考えているだけです。大体、成長し続けなければ崩壊するような社会がまともといえるでしょうか。また、第三国を利用、搾取、または戦争がなければ維持できないような国家がいきづまるのは目に見えてます。
共産主義社会の独裁は単純でしたが、資本主義社会における独裁は見えにくく陰湿です。
今が民主主義の時代だとはとうてい思えません。資本主義の反対語は共産主義ではなくて民主主義です。資本主義なんかさっさとやめて民主主義の国家をめざすべきです。

東洋の宗教感の基本は人間の性善性、永遠、輪廻などの超時間感覚、万物に宿っているとされる多神教などです。これらの考え方が史実に対する受け取り方に影響を与えるのではないでしょうか。
とは言うものの、私の考えが大多数の日本人と違っているという現実に対しては説明不能に陥ってしまうのですが。
思うに、多数の日本人は、馬鹿なのです。そして彼等を馬鹿に仕立て上げたものこそ教育や制度、資本主義、それに付随する独裁なのです。

僕の見解に対する反応は、おおむね好意的です。文章で書くほど生意気にはしゃべらないし、本当はみんなは馬鹿ではないのです。

10 あなたは、あなたの音楽に対し、良い評論を得ていますか?

普通の人々は好意的ではありますが、専門家からはあまり良い評論を得たことはありません。
僕の知らない音楽家の名前を出してきて、「何々の影響を受けている」と言われることもよくあります。頓珍漢なことも言われます。また、ひどく深刻な音楽であるとも思われがちです。
僕の描くイラストと、チルドレンクーデターの音楽に、共通するイメージを持つか、無意味な組み合わせと感じるかで、評価方法が大きく別れるようです。

11 あなたの描く、サボテンの頭と、腕と、ペニスを持った少年について何か話してください。

それは「さぼてん坊や」です。
彼の母親は厳格な性格であったために、偏食を嫌い、息子にサボテンをも食べさせて育てました。
「好き嫌いのない」少年に育った彼にとって、愛の問題は複雑でした。「好き」と言わせるためにはどのような拷問を行うこともいとわなかったのです。
拷問の恐怖から、彼にたいして「愛している」と言わざるを得ない売春婦、しかし、サボテンペニスによるセックスはご免です。彼にたいして、プラトニックな愛を解こうとするが悲しいかな、自分は売春婦、こうして、彼と売春婦はそれぞれ精神的自滅へと向かいます。さぼてん坊やの自虐的妄想は、植木鉢に植えられたままアパートの窓から投げ捨てられることです。もちろん、死ぬ寸前には「ママ!」と叫びながら。
と言うようなお話の僕の作品です。

12 マゾ的楽器のカバーの絵は素晴しいですね。あれは何について描いたものなのですか、又、何によって喚起されたのですか?特に、ブックレットの後ろの山の絵に特にひかれます。

ありがとうございます。
山の頂上にいるのは、兎です。核戦争後の荒れ地で卑屈に暮らしている兎の夢を見たのです。兎とイメージが重なっている人間は、ニーチェの作品のパロディです。脳味噌のない人間もかかれています。
また、小さな3つの核心をイメージした花火、国道沿いの解体された便所など、作者にしか解らぬイメージを描いています。
見る人には、いろいろと空想を働かせて見てほしいと思います。

13 あなたは、個人的に、どのようにしてベースを弾き初め、曲を作るようになったのですか?

本当のことを言いましょう。ベースを選んだのは、ただベースの音が好きだったから、曲を作り始めたのは、他人の曲を演奏したくなかったからです。
音楽を始めたのは既製の音楽やロックのほとんどが嫌いだったから、そして絵の学校だったので絵に対するアンチな気持ちがそもそものきっかけです。結局、無知と勢いだけです。

14 あなたのライブでは、みんなは踊っていますか?
今までで、………延べ、10人ぐらいでしょうか、踊った人は。踊る人は痙攣みたいです。素晴らしい。

15 あなたはよく、他人の作った曲をカバーしますか?

カバーは、ほとんどしません。007も、カバーではなくて、パロディにすぎません。

16 将来のチルドレンクーデターの計画はありますか?新しいレコーディングの発表はありませんか?

新作については、いづれ、どこかが出してくれるかもしれませんが、将来の計画は特にありません。もし、作曲やセッションに飽きればやめてしまっても構わないのです。
ぼくは音楽に限らず、作品を作ることが好きなのです。

1994.7.16