朝、いつものように強制給餌と投薬。これがすっかりルーティンなのよ。最近は順調なのに、ちょっと嫌がって親指を噛まれた。血が出た。
昼、昼飯を作りに上ると、みっけが「にゃあ」とないた。おや?と思い、撫でた。「どうした?」そのままじっとしていた。
夕方4時、コーヒーを淹れようと思って上がった。
みっけは息を引き取っていた。
「みっけ」
呼んでも返事はなかった。すぐ傍にとめがいた。
心を何ものかに鷲掴みにされて潰された。
あたふたドタバタして、気がつくと夜で、ろうそくを灯し、奥様が慌てて買いに行った花を飾り、お通夜が始まった。
明日の夜まで、みっけはここにいる。
寝顔はいつもの寝顔と一緒だ。撫でていると体温が上がって起き上がるのではないかと思える。でも冷やさなければ。
今夜は寝ずの番で、思い出話に花が咲くはずなのだが、思い出すと嗚咽が漏れるのだ。これは困った。所詮猫だ。ただのペットであるからして、なのにこれはペットを飼っていない人には絶対に伝わらない感情なのだな。
実際には、親の死に目よりも辛さが押し寄せることを知った。
小動物はあまりにも儚く、飼い主は絶対で、あいつらったら、ただ健気なだけのあまりにもピュアな存在なわけなのだ。そういうのに弱いのよね。
みっけはすぐ傍で寝ている。お別れしたくないなあ。まだ薬も餌も残ってるし。みっけの分だし。椅子の上も空いてるし、とめもいるし、春になったらまたバルコニーや屋上でひなたぼっこをする約束じゃないか。